banner: ‘I love nature and nature loves me …..’ by CLAUDIA DEA (トリミング) under a Creative Commons Attribution 2.0.
新しいクラスをつくる体験をしたところで、
既存のクラスを使ってみる体験もしてみます。
APIリファレンスを見ながら、すすめていきましょう。
左上フレームにリストされているのが、クラス名(型名)です。
ためしにCyCityをクリックしてみましょう。
すると、右フレームにCyCity型のインスタンスメソッドがずらずらーっと出てきます。
CyCity型のメソッドだけでもずいぶん数があります。
流し読みしつつ、気になったのを見ていきましょう。
なお、色付き文字になっているのは型です。例えば、
BOOL - ブール型(真と偽の2択)
INT - 数値型
VOID - なし(戻り値を返さないもの)
茶色 - なにかのID(基本的なふるまいはINTと同じ)
緑色 - クラス型
こんな具合です。
筆者が気になったのは、まずこれ。
19. INT calculateDistanceMaintenance ()
距離維持費を計算して返してくれるインスタンスメソッドですね。
最初に書いてあるINTが戻り値の型を表します。この場合は数値型です。
追加の引数がないメソッドはc = pCity.calculateDistanceMaintenance()
のように
都市のインスタンスさえ用意できれば簡単に呼び出せるので練習台によいですね。
次はこれ。
47. VOID changeExtraHappiness (INT iChange)
48. VOID changeExtraHealth (INT iChange)
幸福や衛生をiChange
ぶんだけ変えてしまうメソッドです。
「やったー!」や「文明により」で追加される幸福や衛生がこれに当たります。
pCity.changeExtraHealth(3)
とすれば衛生+3にできますね。
数値型の引数をひとつだけ取るメソッドも練習台にはよいです。
どんどんいきましょう。
50. VOID changeFood (INT iChange)
63. VOID changeProduction (INT iChange)
食料やハンマーのたまり具合を直接増減させてしまいます。
と、ここで、少し用語の説明をしましょう。
CommerceとYieldについてです。
YieldとはFood(パン)・Production(ハンマー)・Commerce(コイン)の総称です。
内部ではこれらをひとまとめで扱い、個々の出力はYieldIDによって区別します。
たとえばバニラでは、Yield0番がFood・Yield1番がProduction・Yield2番がCommerceになっています。
何が何番なのかはYieldTypes.YIELD_FOOD
などとしても求められるので、
実際にMODを作る際はそちらを使うほうがよいでしょう。
CommerceとはGold(ゴールド)・Research(ビーカー)・Culture(文化)・Espionage(スパイポイント)の総称です。
Commerce(コイン)と英名がまったく同じなのでものずごく紛らわしいですが、とにかくそうなっています。
コインをスライダーによって振り分けるこの4つの出力を
内部ではひとまとめで扱い、個々の出力はCommerceIDによって区別します。
たとえばバニラでは、Commerce0番がGold・Commerce1番がResearch・Commerce2番がCulture・Commerce3番がEspionageになっています。
何が何番なのかはCommerceTypes.COMMERCE_ESPIONAGE
などとしても求められるので、
実際にMODを作る際はそちらを使うほうがよいでしょう。
(もちろん、スパイなしのオプションを入れると、Commerce3番は全く出なくなり、
Commerce2番に振り分けられます。MODでもスパイなしオプションに対応する場合は
考慮しなければならないため、いちおう覚えておきましょう。)
したがって、CyCity型のインスタンスメソッドでも、
都市のインスタンスから毎ターン何ビーカー出ているか求めたいと思ったとき、
139. INT getCommerceRate (CommerceType eIndex)
iResearch = pCity.getCommerceRate(CommerceTypes.COMMERCE_RESEARCH)
とする必要があります。
なお、ここでのRateはPer Turn(ターンごと)のRateです。
スライダーで決めるCommerceの割り振り割合ではありません。そちらはCommercePercentと呼ばれています。
さらに、図書館などの効果でよくある「ビーカー+25%」のパーセントはCommerceRateModifierです。
140. INT getCommerceRateModifier (CommerceType eIndex)
こちらにより、その都市に合計で+何%の修正があるか取得できます。
なにかのIDの指定を引数で要求してくるメソッドは他にもたくさんあります。
たとえば建造物種IDでいえば、
229. INT getNumBuilding (BuildingType iIndex)
これは指定した建造物種IDに対応した建造物が都市内にいくつ建っているか
(といっても通常0か1ですが)を取得してくるメソッドです。
建造物種IDはgc.getInfoTypeForString(XMLキーの文字列)
とすることで求められます。
if pCity.getNumBuilding( gc.getInfoTypeForString('BUILDING_LIBRARY') ) > 0:
などとすれば、都市インスタンスに図書館が建っているかどうかを判定できます。
IDを要求するのではなく、戻り値として返してくれるメソッドもあります。
243. PlayerType getOwner ()
都市の所有者のPlayerIDを返してくれます。
ところで、便利なメソッドがたくさんあるのはいいのですが、肝心のインスタンスは
どこから取得すればよいのでしょうか。
方法は大きく分けて2つあります。
イベントリストを見てみましょう。
たとえば、「建造物が都市で作成されたとき」を表すイベント、
def onUnitBuilt()
を見てみます。
このイベントの主たる注目点は「どの都市で?」「どのユニットが?」作成されたのか、ということですが、
それらの情報はargsList
にリストにされて送られてきています。
表を見ると、argsList
の中身はcity, unit, player
の3つだと書いてあります。
なので、このようにしてみます。
def onUnitBuilt(self, argsList):
'Called when a unit is built in a city'
super(self.__class__, self).onUnitBuilt(argsList)
pCity, pUnit、pPlayer = argsList
##########
pCity, pUnit, pPlayer = argsList
でargsList
の中身を3つに分けて代入しています。
ここで代入した変数pCity
の中身が「ユニットを作った都市」を表すインスタンスになっています。
例えばつづけてcityname = pCity.getName()
と書けば、
ユニットが作成されるたび、その都市の名前がcityname
に代入されるようになります。
どうせなので作成されたユニットのインスタンスからも名前を取得してみましょう。
unitname = pUnit.getName()
です。
さらにさらにどうせですからu"%sで%sがつくられました。" % (cityname, unitname)
というフォーマット文字列を作って表示してみましょう…
# -*- coding: shift_jis -*-
from CvPythonExtensions import *
import CvEventManager
import CvUtil
gc = CyGlobalContext()
class MyEventManager(CvEventManager.CvEventManager, object):
def onUnitBuilt(self, argsList):
'Called when a unit is built in a city'
super(self.__class__, self).onUnitBuilt(argsList)
pCity, pUnit, pPlayer = argsList
##########
cityname = pCity.getName()
unitname = pUnit.getName()
message = u"%sで%sがつくられました。" % (cityname, unitname)
CyInterface().addImmediateMessage(message, "")
が、ターンを進めてみても、メッセージが現れず、うまくいきません。
PythonErr.logをみると、13行目で"more than 2 values to unpack.“というエラーになっています。
『リストの中身が2個しかないから(3個の変数には)代入できないよ><』ということです。
表を何度見ても3個なのですが……ここは表の方が間違っていたということでしょう。
pPlayer
を諦めて、pCity, pUnit = argsList
と書き直します。
しばらくプレイして、ユニット作成報告を楽しみましょう。
しばらく眺めていると、他国のユニットも流れてくることが分かります。
onUnitBuilt()
は「ユニットが都市で作成されたとき」はいつでも呼び出され、
それが人間プレイヤーの配下であるかどうかはとくに区別されないことがわかります。
CyCity型のメソッドgetOwner()
で返ってくるのはPlayerIDでした。
iPlayer = pCity.getOwner()
このIDを持っていったらCyPlayer型のインスタンスを返してくれる関数があったらいいのに…
と思うところですが、それはCyGlobalContext型のインスタンスメソッドとして用意されています。
208. CyPlayer getPlayer (INT idx)
まずCyGlobalContext型のインスタンスを作って、
gc = CyGlobalContext()
インスタンスメソッドgetPlayer()
を呼び出します。
pPlayer = gc.getPlayer(iPlayer)
そうすると、この返ってきたpPlayer
はCyPlayer型のインスタンスです。
CyGlobalContext型のインスタンスはひとつあれば十分なので、
ファイル冒頭にgc = CyGlobalContext()
として作ってしまって、
以後gc
を使いまわすようにしているMODが多いようです。
CyPlayerのインスタンスメソッドでできることは本当に多岐にわたっていて、
とてもここでは説明しつくせない量ですので各自リファレンスを見ていただくことにして、
今回は例として「奴隷制」の社会制度を採用しているときにだけ
ユニット作成報告が上がるようにしてみましょう。
奴隷制のXMLキーは"CIVIC_SLAVERY"
ですから、
gc.getInfoTypeForString("CIVIC_SLAVERY")
でCivicTypeを取得できます。
そのCivicTypeと、先に手に入れたCyPlayer型のインスタンスを使って、
これを呼び出します。
328. BOOL isCivic (CivicType eCivic)
全部でこうなります…
# -*- coding: shift_jis -*-
from CvPythonExtensions import *
import CvEventManager
import CvUtil
gc = CyGlobalContext()
class MyEventManager(CvEventManager.CvEventManager, object):
def onUnitBuilt(self, argsList):
'Called when a unit is built in a city'
super(self.__class__, self).onUnitBuilt(argsList)
pCity, pUnit = argsList
##########
iPlayer = pCity.getOwner()
pPlayer = gc.getPlayer(iPlayer)
eMan = gc.getInfoTypeForString("CIVIC_SLAVERY")
if pPlayer.isCivic(eMan):
cityname = pCity.getName()
unitname = pUnit.getName()
message = u"奴隷制を採用する%sで%sがつくられました。" % (cityname, unitname)
CyInterface().addImmediateMessage(message, "")
pCity
が人間プレイヤーの都市とは限らないことに注意してください。
したがってpCity.getOwner()
で取得したPlayerIDも「そのユニットを作ったPlayer」であって、
必ずしも人間プレイヤーではありません。
そのPlayerのインスタンスがpPlayer
になるので、それを使ってpPlayer.isCivic(eMan)
と判定すると
「ユニットを作ったPlayerが奴隷制を採用しているなら」を判定していることになります。